今話題のMuse細胞とは

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あくまで興味を持った管理者があくまで個人レベルでの調査・文献検索での記事です。信憑性・正確さは保証できません。Muse細胞ってこんなことできるんだ。ぐらいの知識を得る程度でお願いいたします。また、何か間違いがあれば、是非教えていただきたいです。コメントの方によろしくお願いいたします。

Muse細胞(Muse cell; Multi-lineage differentiating Stress Enduring cell)とは

Muse(ミューズ)細胞とは、人間の体の中に存在し誰もが持っている多能性幹細胞です。体にあるほぼ全ての組織や結合組織、骨髄や血液に存在しています。この細胞の腫瘍性に関連する遺伝子は体細胞レベルと同じくらい低く、テロメラーゼ活性も低く抑えられているため、無限増殖を行いません。そのためMuse細胞を体に移植しても腫瘍を形成する危険が極めて低いと言われています。この細胞は2010年に東方大学のグループにより発見され、その後報告*1されました。

特徴

  • ストレス耐性を有する*2
  • 他の幹細胞よりも短時間でDNAの損傷修復が行われる*3
  • 様々な細胞の結合組織、骨髄、血液中に存在する*1
  • 静脈経由または局所への投与により、生体の損傷部位へと選択的に集積・生着する *4 *5 *6

その他いろいろあるようです。が、個人的に興味を持ったのは

静脈経由または局所への投与により、生体の損傷部位へと選択的に集積・生着する

この部分です。

なぜか。それは「生体の損傷部位へと選択的に集積・生着」ということは、Muse細胞は、何かしらの信号を受け取ることにより自発的に損傷された組織・細胞に集合し、何らかの修復作業をするのではないかと思ったのです。

Muse細胞は組織修復細胞なのか

予想通り、Muse細胞は生体内で組織修復を担っている細胞である可能性があることが示唆されていました。これが示唆される理由は以下の通りで、脳梗塞患者の発症後24hで血液内のMuse細胞数が統計的有意差を持って増加していること*7。また心筋梗塞を持つ患者の血液中のMuise細胞の動態解析では、発症急性期に血液中のMuse細胞が増加した患者は、半年後、症状に改善傾向が見られ、反対に増加しなかった患者には改善傾向が見られなかったこと。これらから、Muse細胞が組織修復を担っていることが示唆されているようです。

Muse細胞の臨床試験

元々、このMuse細胞を用いた再生医療製品等の研究開発事業は、株式会社 Clioが行なっていました。しかし、生命科学インスティテュートが2017/01/01付で完全子会社(株)Clioを吸収合併したことにより、現在は三菱ケミカルホールディングスグループ傘下の(株)生命科学インスティテュートが承継しているようです。また、同社は医薬品製造品質管理基準(GMP)および再生医療等製品に関わる規制要件(GCTP)を満たす細胞処理手順を確立したことにより、2018年1月より急性心筋梗塞患者を対象とした探索的臨床試験が開始されているようです。

用語説明

多能性幹細胞(pluripotent cell, pluripotent stem cell)

生体にある様々な細胞・組織に変化する能力を、潜在的に持つ細胞を表します。詳しく説明すれば、この多能性幹細胞に分類されるには「内胚葉」「中胚葉」「外胚葉」の全てに変化可能である細胞を示しています。また、変化を終えた成熟した体細胞から、遺伝子導入などにより多能性細胞を人工的に作り出すことが可能であるということが明らかにされており、その細胞は「人工多能性細胞(iPS細胞)」と命名されています。

テロメア

細胞の核にある染色体の末端領域のことを表します。単純な反復配列からなり、細胞分裂のたびに短くなるので、細胞は決められた回数(約50~60回)しか分裂することができません。このことより、反復数が次第に減少することが細胞老化に関係し、体の老化との関連が示唆されています。この末端領域の反復配列はテロメラーゼという酵素により伸長されます。

テロメラーゼ

染色体にテロメアの反復配列を追加する酵素のこと。人間の体細胞では年齢に応じて活性が低下していて、老化との関連が示唆されています。テロメアにより細胞は分裂回数を制限されています。しかし、がん細胞や生殖細胞が無限に分裂を繰り返すことができるのは、テロメラーゼ活性により、染色体の末端領域にある反復配列が伸長されているからです。つまり、テロメラーゼ活性が抑制されると、がん細胞の増殖が遅くなるということになります。

動態解析

観察する対象物の経時的な変化を調べる手法を表す。簡潔に言えば、細胞の移動量になります。一定間隔で撮影・計測したデータを元に、対象がどの方向にどのような速さで移動したかなどを解析することができます。

脚注

*1: Kuroda, Yasumasa; Kitada, Masaaki; Wakao, Shohei; Nishikawa, Kouki; Tanimura, Yukihiro; Makinoshima, Hideki; Goda, Makoto; Akashi, Hideo et al. (2010-05-11). “Unique multipotent cells in adult human mesenchymal cell populations”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 107 (19): 8639–8643. doi:10.1073/pnas.0911647107. ISSN 1091-6490. PMC PMC2889306. PMID 20421459.

*2: Alessio, Nicola; Özcan, Servet; Tatsumi, Kazuki; Murat, Ayşegül; Peluso, Gianfranco; Dezawa, Mari; Galderisi, Umberto (2017-01-02). “The secretome of MUSE cells contains factors that may play a role in regulation of stemness, apoptosis and immunomodulation”. Cell Cycle (Georgetown, Tex.) 16 (1): 33–44. doi:10.1080/15384101.2016.1211215. ISSN 1551-4005. PMC PMC5270533. PMID 27463232.

*3: Alessio, Nicola; Squillaro, Tiziana; Özcan, Servet; Di Bernardo, Giovanni; Venditti, Massimo; Melone, Mariarosa; Peluso, Gianfranco; Galderisi, Umberto (2018-04-10). “Stress and stem cells: adult Muse cells tolerate extensive genotoxic stimuli better than mesenchymal stromal cells”. Oncotarget 9 (27): 19328–19341. doi:10.18632/oncotarget.25039. ISSN 1949-2553. PMC PMC5922400. PMID 29721206.

*4: Katagiri, H.; Kushida, Y.; Nojima, M.; Kuroda, Y.; Wakao, S.; Ishida, K.; Endo, F.; Kume, K. et al. (2016-2). “A Distinct Subpopulation of Bone Marrow Mesenchymal Stem Cells, Muse Cells, Directly Commit to the Replacement of Liver Components”. American Journal of Transplantation: Official Journal of the American Society of Transplantation and the American Society of Transplant Surgeons 16 (2): 468–483. doi:10.1111/ajt.13537. ISSN 1600-6143. PMID 26663569.

*5: Uchida, Hiroki; Morita, Takahiro; Niizuma, Kuniyasu; Kushida, Yoshihiro; Kuroda, Yasumasa; Wakao, Shohei; Sakata, Hiroyuki; Matsuzaka, Yoshiya et al. (2016-1). “Transplantation of Unique Subpopulation of Fibroblasts, Muse Cells, Ameliorates Experimental Stroke Possibly via Robust Neuronal Differentiation”. Stem Cells (Dayton, Ohio) 34 (1): 160–173. doi:10.1002/stem.2206. ISSN 1549-4918. PMID 26388204.

*6: Kinoshita, Kahori; Kuno, Shinichiro; Ishimine, Hisako; Aoi, Noriyuki; Mineda, Kazuhide; Kato, Harunosuke; Doi, Kentaro; Kanayama, Koji et al. (2015-2). “Therapeutic Potential of Adipose-Derived SSEA-3-Positive Muse Cells for Treating Diabetic Skin Ulcers”. Stem Cells Translational Medicine 4 (2): 146–155. doi:10.5966/sctm.2014-0181. ISSN 2157-6564. PMC PMC4303359. PMID 25561682.

*7: Hori, Emiko; Hayakawa, Yumiko; Hayashi, Tomohide; Hori, Satoshi; Okamoto, Soushi; Shibata, Takashi; Kubo, Michiya; Horie, Yukio et al. (2016-6). “Mobilization of Pluripotent Multilineage-Differentiating Stress-Enduring Cells in Ischemic Stroke”. Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases: The Official Journal of National Stroke Association 25 (6): 1473–1481. doi:10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2015.12.033. ISSN 1532-8511. PMID 27019988.